第74章

…?

全身を支配する痛みが、鈍いものから鋭いものに変化していく中、僕は空を見上げる――や

はり星空、月が綺麗に映えている。自分の身体のあちこちから匂ってくる、ほのかな血の匂い

が、酷く不似合いな風景だった。

口の中に、濃厚な血の味。

やはり内臓が傷んでいる……はらわたがほどよい具合にかき混ぜられている。だがまあ、こ

れなら、死ぬほどではないな……。それに、病院に行かなければならないほどでもない。既に

不死身の身体ではなくなったとはいえ、それでもある程度の治癒力は残されている、一晩安静

にしていれば、そこそこ回復するだろう……命からがら、助かったってところか……。

しかし……。

殴られる直前の記憶が、不意に、特に理由もなく、蘇る。雨合羽の左拳が、僕を目掛けて―

―その拳だけが、クローズアップされて、フラッシュバックする。自転車を殴ったときなの

か、それともブロック塀を貫いたときなのか、摩擦で破れてしまっ……

(ò﹏ò)

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