第98章

ボール部のエース。

切り落としてくれ――と彼女は言った。

忍野から、その左腕が猿の手ではなく悪魔の手であり、願いは、神原が願った通りに叶えら

れただけだという、ロクでもない、暴かれなくてもいいような真相を、暴かれてしまった直後

……数秒だけ目を伏せた後で、しかし気丈に顔を起こし、僕と忍野を交互に見て、そう言っ

た。

「こんな左手、いらない」

神原は言った。

さすがに、あの笑顔は、表情にはない。

それは――奇しくも、彼女の尊敬する先輩の、現在のパーソナリティ……平坦で、淡白で、

感情を感じさせない、口調だった。

「切り落としてくれ。切断して欲しい。頼む。面倒かけるが、お願いする。自分で自分の腕を

切り落とすことはできないから……」

「や、やめろよ」

僕は慌てて、差し出されたような形のその腕を、神原に押し返すようにした。毛むくじゃら

な感覚が、手に気持ち悪い。ぞわっとする。

ぞっとする。

「何馬鹿なことを言ってんだ……

(ò﹏ò)

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